もりのおくりもの

2012年04月09日

おおきな原野のちいさな森の奥へとつづく雪原の足跡。
それはメープルシロップを作るために、
イタヤカエデの樹液を集めてまわるとき
私がスノーシューをつけて歩いてできた道。

雪深い森。
夜には氷点下の気温まで下がりますが、
日中はプラスの気温になり暖かな光が森の中に差し込んでいます。

まだ眠っているように見えるイタヤカエデたちですが
芽吹きに必要な水分と養分を
幹の中にためこみ、それがグルグルと循環しているのです。
芽生えが始まると樹液は若葉が必要とするため出なくなります。
それまでの短い時間の貴重な贈り物です。

おおきな原野では、何千年も前から
アイヌの人々がこのイタヤカエデの木から樹液を採取し
森の恵みをいただき、森と共生していました。
百年ほど前に、おおきな原野へ開拓に入植した人々も
アイヌの人から教えをこい、イタヤカエデの樹液から
メープルシロップを作ることをしていました。
けれども,4〜50年ほど前から
人々は樹液を採取することを止めてしまいました。
暮らしが豊かになり
お金を出せば砂糖や、そのほかの甘い物が手に入るようになったからです。
今では誰ひとり,この原野でメープルシロップを作る人はいません。

けれども,人は本当に豊かになったのでしょうか?

失ったのは、
たんなるメープルシロップ作りの技術だけではありません。
物をつくり出す心。
自然の恵みにたいし、感謝し、感動し、畏敬し、
命の大切さを知ること、命を丁寧に生きること・・・
自然に生かされ、そしてともに生きることを学ぶこと・・・
平和や豊かさとは,頭の中の理論だけで創りだせるのではなく
日々の暮らしに・・・足元にあることを・・・

まだ雪深い森。
けれどもこの森は生きるものたちには、とても暖かです。
森だけでなく,ほんとうはこの星は生きるものすべてに暖かなのです。
誰もが歩く道ではなく、
森の奥に踏み入る勇気があれば
だれでもこんな暖かな世界に身を置くことができるのです。

この森に暮らして28年。
メープルシロップ作りも今年で28回目。
まだたったの28回。
そしていったい後何回できるのでしょうか?

私の命はいつか終わる。
けれども,森はいつまでも続いていく・・・・・



Posted by kokemomo at 01:21│Comments(0)
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