白鳥からの贈り物
星さえも凍てつき、きらめきを増す初冬の夜空を、数羽の白鳥が鳴きかわしながら、南へ飛んでいく季節になりました。
時には、あまりに低く飛ぶのでその柔らかな羽の音さえ聞こえてきます。
その羽の音は、絹の布をきしませるようなちょっと言葉にできない、優しくそして悲しい音です。
満月の明るい夜空を白鳥が飛ぶ風景は、どんな絵描きにも描ききれない一瞬の絵画のようです。
そして、規則正しいやわらかな羽音をリズムに鳴きかわす悲しい白鳥のコーラスは、どんな音楽家にも奏でられない音楽のようです。
私たちにできるのは、こうして一つづつ拾い集めたたいせつなちいさな宝物で、心の小箱を満たしゆたかな感性がゆっくりとはぐくまれるのを見守るだけなのかもしれません。